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『彼女と彼女の猫』-Their Standing Points-〜「世界系」の原点〜

  • Writer: Tom
    Tom
  • Jul 1, 2023
  • 2 min read

 作品時間が5分もないアニメーションは非常に美しく、しかしその理由を初見で明確に説明するのが難しかった。ただ、全体的な雰囲気が以降の作品の原点になっているのは良く分かった。センチメンタルな雰囲気は『秒速5センチメートル』に似ている。実写かと思うほどの背景画に対して、主人公は驚くほど雑だ。猫をナレーションにした視点は『だれかのまなざし』そのままで、最後の男女の掛け合いで終わるシーンは『ほしのこえ』である。限られた登場人物で「この世界のことを好きだと思う」と締め括る手法は「世界系」の原点のように感じる。

 監督は『君の名は』、『天気の子』などで有名な日本を代表する新海誠である。『彼女と彼女の猫』は、1999年に製作された短編アニメ小説でモノクロという特徴がある。主人公の猫は「彼女」に拾われ、春夏秋冬を過ごす日常を描いた作品だ。監督が会社勤めをしながら作成した個人作品でありながら、第12回CGアニメグランプリで大賞を獲得した。監督自らが声優を担当していて、「彼女」役の声優は『ほしのこえ』でミカコを演じる篠原美香である。音楽は後の作品でも担当する天門となっている。

 新海誠作品といえば美しい背景描写に緻密な脚本である。この繊細さが作品当時に観客に大きな衝撃を与えたのだろう。新海誠作品の中核になるのは、自分を中心とした現実への肯定的評価、すなわち「世界系の物語の完結」だろう。人類を救うような壮大な物語ではなく(たとえそのような状況であったとしても)主要人物の中心は自分とあなたの「世界」である。本作で言えば、猫(主人公)が彼女(人間)のバッドエンド(少なくともハッピーエンドではない)終着点の中に「自分にとっての「幸せ」を噛み締めることをテーマにしている。それが新海誠作品の賛否両論かつ難しさであり、真骨頂なのだろう。何気ない日常から描く自分と現実を受け入れることを提案する魅せ方はさすがに日本映画史を代表する監督である。



※参考文献

新海誠、(1999)『彼女と彼女の猫』、コミックウェーブ


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