Anything essential is invisible to the eyes 〜留学の宝物〜
大学を卒業してすぐにオーストラリアに留学した。将来は英語の教師になると決めていたから、教壇に経つ前に英語圏で海外経験をしたかったのだ。選んだ都市はパースだった。単純に当時の物価が特に安かったからだ。そして、どうせなら何かを身に付けて帰ってきたいと思い、教育機関で情報技術を専攻することにした。
24歳でオーストラリア。それまで一生懸命勉強し、働いて、やっとの思いでやってきた目標の地だ。周囲の風景がすべてきらきらと輝いて見えた。いろいろな国の友達ができ、現地の優しさにも触れることが出来た。英語や情報技術の知識・技術だけではなく、日本では得にくい国際感覚や異文化体験、人生観など多くのことを得られた。紛れもなくそこには自分だけの特別な思い出が詰まっている。
しかし、すべてが順調でハッピーだったわけではない。溜めていた貯金は一気に底をついてしまった。当時、遠距離恋愛をしていたけれど、信頼していた友達に彼女を奪われてしまった。自動車教習所では詐欺被害にもあって大金を取られてしまった。価値観の違いや苛立ちで大切なルームメイトも失った。最終日は本当に失意の帰国となってしまった。
それでも私は留学して良かったと思う。確かに、留学で失ったものは、お金や大切な人々など目に見えやすいものだった。しかし、思い出や経験といった形にできないものを得られたからだ。それは、何にも変えがたい自分だけの一生の宝物なのである。だから、私は人生の一番好きな言葉に『The Little Prince』にある有名な一文をいつも挙げている。
“Anything essential is invisible to the eyes.”
(本当に大切なものは目に見えないんだ)
※参考文献
サン=テグジュベリ、(1943)、『The Little Prince』(A HARVEST BOOK HARCOURT, INC.)